ドキュメンタリー映画『その声のあなたへ』(監督・脚本:榊原有佑/配給:ナカチカ/ティ・ジョイ)初日舞台あいさつが30日、東京・新宿バルト9で開かれ声優・野村道子、かないみか、勝杏里、谷山紀章、逢田梨香子、榊原監督が登壇し、司会は葵あずさが務めた。
声優業界を黎明期から強烈な個性と演技力で引っ張ってきた大御所中の大御所・内海賢二さん(享年75)の偉業を追ったドキュメンタリー。内海さんといえば、『北斗の拳』のラオウや『Dr.スランプアラレちゃん』の則巻千兵衛、『鋼の錬金術師』のアレックス・ルイ・アームストロングなど、常に第一線で活躍し続けたことで知られる。2013年6月にがん性腹膜炎で惜しまれつつ亡くなっている。本日登壇の声優陣は、内海さんが創設した賢プロダクションに所属の声優らとなる。
内海さんの妻でもある野村としては、本作が制作されると聞いたときのことへ、野村は、「えっ!?と思って。息子と『誰が観る映画なの?』って話をしていたんです。声優いち個人が映画になるなんて聞いたことがないし……。でも、撮影が始まってたくさんの方に出演していただけると聴いて嬉しかったです」と、感じたことを。
試写会を観たという声優仲間からも声が届いたという野村は、「みなさんがとてもいいお話をなさってくださって、楽しい映画になってるな、すごい映画になっているなと感動いたしました」と、感想を伝えるとともに、「きょうも声優さんから涙声で電話がかかってきたんです。『この感動をどこへ伝えたらと思ったときに、道子さんしかいないと思って』と言っていて。その涙声を聴いて、心から感動しました。本当にいろいろありがとうございます」と、しみじみ。このエピソードを語る際に、野村は本作タイトルを“その声のあなたに”と間違えており榊原監督が「『その声のあなたへ』です」とツッコんで、野村が照れながら頭をかくと、逆に声優陣に笑顔が浮かび一気に会場が和やかになるという一幕が。
映画を観て内海さんはどんな人物だったかという質問があがったが、野村は、「私に聞くの?(笑)私が内海と付き合っていた期間は9年間で……」と、交際がスタートしたくだりから話し出すお茶目さを見せて場内を爆笑させつつ、「私、全部理解してたのかなってというのがあって」と、野村にも見えなかった部分があったと告白。
さらに、エピソードとして野村は「私と一緒に仕事すると、スタジオの中で走り回っちゃうんですよ」と、内海さんの野村への想いが弾けるように大はしゃぎする姿が浮かんでくるような話や、かないも「飲みに行ったときにも『帰ったら道子にこれを食べさせる』とずっと言ってて」と愛妻家な一面を証言。
かないは続けて「スタジオに内海さんがいれば、明るくなるんです。大きな声で喋りながら入ってくるから、すぐ分かるんです。私、いまもずっと大好きです」といえば勝は、「内海さんにはなれないなと思いますが、現場で内海さんがしていたことを追いかけたいと思っているんです。現場を良くすることをずっと考えていたので、なんとか出来ないかと考えています」と、背中を見て受け継いだものがある様子を見せていた。
そして、かないからは、「あらためて内海賢二ってかっけーなと思ってもらえたらと思います。内海さんがまだいるような感じがしています。みんなに愛されている内海さんをこうして映画にしてくださってありがとうございます」というと、勝は「僕らの愛するこの業界のことをみなさんに伝えるには素晴らしい形で出来上がったのではと感じています。業界の方もそうでない方も楽しめるものになっていると思います」と、アピール。
野村は満員の劇場を見回し「内海賢二が映画になるなんて思わなかったので、きょうもたくさんの方に観て頂けることに心から感謝いたします。1番ビックリしているのは、“あっちの方”にいる内海賢二だと思います」と、虚空を眺め内海さんの気持ちを代弁していた。
ドキュメンタリー映画『その声のあなたへ』は公開中。
※谷山紀章と逢田梨香子のエピソード記事
・谷山紀章「僕のボスは後にも先にも内海賢二だけです」
・逢田梨香子「その声のあなたへ」内海賢二さんへ「チャーミング」