4月30日~5月6日まで、東京・伊勢丹新宿店本館6階 催物場で、「未来のおもちゃ箱 ~STEAM FESTIVAL~」が開催された。
これは、未来の世界で活躍する子どもたちに向けて、「STEAM(※)」に関する様々な遊びや創造性に関する体験コーナーを中心に関連商品が販売されるというもので、会場では体験できるワークショップが23企画もあり、それぞれ親子連れで大盛況だった。
そんな中でも、ひときわ子供たちの大歓声で盛り上がっていたのが、『株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント』のキューブ型ロボット『toio(トイオ)』のワークショップ「クラフトファイターチャレンジ大会」。
LEGO ®や紙コップとストローを使い自分で作ったクラフトファイターに32ミリ幅のキューブ型ロボット『toio(トイオ)』を装着。必殺技カードを1枚読み込ませ、リング型コントローラーを使って、相手を倒したり、土俵から押し出したら勝ちというゲーム。40代50代にとっては懐かしい紙相撲が最新テクノロジーで進化したと思えば想像しやすい。
さっそく覗いてみると、4人ひと列が3列で12人の子供たちが、toio博士や先生、スタッフのお兄さん、お姉さんのアドバイスを聞きながら、LEGO ®と紙工作で2体のファイター作りの真っ最中!みな、真剣そのもの。中には、お父さんの方が夢中で工作に取り掛かっているところも。
しばらくすると、女の子たちは花壇など女の子らしいものが、男の子は戦車のような男の子らしいLEGO ®が完成。対する紙工作は、小さい紙コップとストローをうまく使い、クワガタ、カブトムシなど角のある昆虫を模したものや底辺に星型を作ったものなど様々。果たして、どんなカタチがつよいのか? イザ、勝負!
専用シートに描かれた土俵を出ると、キューブを装着しているクラフトファイターがブルブルと震えるので、勝負ありがわかる仕組み。
なかなか土俵を割らずに、引き分け再試合が何回も続くような拮抗した戦いから、電車道のごとく一気に押し出す速攻!逆に土俵際まで一気に押されたら、くるりと回転して相手を押し出す逆転勝利など、手に汗握る戦いが続くなど、見ている側も思わず声が出てしまう。
必殺技カードやコントローラーを使いこなす呑み込みの早いテクニシャンな子供もいれば、クワガタのはさみ部分、カブトムシの角をうまく使うなど、工作自体がツワモノで連勝を飾るなどそれぞれの子供の特徴が出ていて面白い。
バトル中は真剣そのもので、勝負がつくと、女の子でもガッツポーズしたり、ドヤ顔する男の子、笑顔を爆発させるなど、昔懐かしい(?)子供らしい表情にあふれていた。また、決勝戦では、負けた男の子が悔し泣きし、それを親御さんが慰める微笑ましい光景もあった。
むかし懐かしい紙相撲と現代のテクノロジーが融合した「クラフトファイター」。コンピューターゲームの「格闘ゲーム」とは違ったアプローチで、レトロ感たっぷりのおもちゃを作ろうとしたきっかけを、開発した『株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント』のプラットフォームプランニング&マネジメント部門 T事業企画室 課長(事業開発担当)の田中章愛氏と“toio博士”の『株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所』のリサーチャー 学術博士のアンドレ・アレクシー氏に聞いた。
toio博士のアレクシー氏によると、toioにつながる原体験として、2011年に自身が東京に住んでいるご家庭に泊まりに行ったとき、3歳の女の子がお人形さん遊びをしていた時のことが思い出されるという。宇宙に居て、電車で地球に戻ってくる設定もさることながら、次々と登場人物が出て来るし、なによりストーリーが無限に広がっていくことに、「なぜこの子が、ここまで楽しめるのか」と、はじめは不思議に思ったという。
例えば、身の回りにあるビデオゲームや映画は決まっているストーリーに深く没入することができるが、先の女の子のようにキャラクターを好みのものに入れ替えたり、次々と設定が変わるなど元のストーリーから大きく逸脱するのは難しい。このような逸脱をむしろあの女の子のように許容してみると、新しい楽しみ方として可能性を広げることができるんじゃないかという思いに至った。
「自分の好きなおもちゃが自由に動き出して一緒に遊びたい、というときはどうしたらいいのか?と考えた。かつては、手で動かしながら、そういう気分になるしかなかった。でも、飽きてしまうので、それを半分自動にしてあげれば、子供たちの想像力を生かしつつ長く一緒に遊べるような面白いものが作れるんじゃないか?と、思ってこういうものがでてきた。おもちゃの中に頭脳や移動手段になるキューブ型ロボットを入れて、魂を吹き込み、ショートストーリーは子供の考えているものをストレートに反映できると面白いんじゃないか」と、誕生の経緯を語った。
事業企画・開発の田中氏は、「デジタルのゲームはすごく面白いんですけど、これをいざ子供たちが自分でデジタルデータを作るにはパソコンが必要ですし、専門的な道具を使いこなす必要もあります。もちろんできる子もいますが、少しハードルが高い。それに対して、toioの場合は、子供が赤ちゃんのころからほぼ毎日触り、どう使うか感覚がわかっているおもちゃの延長で遊べるということにこだわっていて、これまでやってきたのと同じ方法で、デジタルゲームに近い世界を好きにいじったり、手作りできるというのが大きな特徴かなと思っています」と、説明した。
toioというネーミングは、おもちゃの「toy」と入出力を意味する「I/O(Input/Output)」を組み合わせ、リアルとコンピューターが融合したエンタテインメントを表現している。また、視覚的にも小文字のtが手を、oioが顔を表し、体感で楽しむものというコンセプトをロゴで表現している。
toioは、いわゆる「知育玩具」と言われるジャンルにも似たロボットおもちゃで、2つのリング状のコントローラーがつながった「toioコンソール」と、小型モーターを内蔵してプログラムに従って前後左右に自在に動く2台の「toioコア キューブ」、そしてtoioに動きをプログラムして命を吹き込む「カートリッジ」で構成されている。キューブの動作は別売のカートリッジによって様々に変えられ、2台が協調して動いたり、あるいは2台が別々の生物のように相手を認識しながら動いたりといったことができる。
動く仕組みについて、toio博士のアレクシー氏は、「キューブの裏側にセンサーがついていて、カードやシート上に特殊に印刷された文字情報を読みこんでいます。位置情報が含まれているので、キューブがどこにいるか・どういう向きになっているかという情報をコンソールに送り、両方のキューブ位置と向きを使ってシナリオ通りに制御したりルールに沿って判定します。例えば『クラフトファイター』の場合は相撲のルールで自動判定したり必殺技が出せることで戦いが成立します」。
これが違うカートリッジの場合は違うルールになる。『工作生物 ゲズンロイド』では、2つのキューブを1枚の長方形の長い紙で結ぶと、しゃくとり虫のような動きになったり、逆に上部がつながり途中から2つに分かれた人間の腰から下のように長方形の紙を作ってキューブに付けると、歩行のような動きをする。
さらに、『GoGoロボットプログラミング~ロジーボのひみつ~』では、絵本上に示されたスタートからゴールまでマス目を、何マス目まで直進し、上下左右に向きを変えて、何マス進めばいいのか。それを考え、指示カードを順番に並べたあと、その上をキューブに自走させ読み込ませて、絵本の上に置くと、正解ならキューブがゴールにたどり着けるが。不正解の場合なら、どこが間違っていたのか考え、正解を導き出すといった具合に、楽しみながら、子供に考える力、創意工夫する力を身につかせることができる。
田中氏は、「例えば『クラフトファイター』ならば、工夫次第でお相撲のルールを使って綱引きもできる。本来は土俵を割ったら負けだったものが、ルールを逆にして綱引きに応用することで、土俵を割ったら勝ちになる、という独自のアレンジにつながる。このように、toioはもともとのルールを自分なりに工夫し逸脱することで、枠にとらわれない、自由な発想、ひらめきで、遊び方がどんどん引き出せます。それがが、toioです」と、魅力を語る。
そういった意味では、開発者たちもキューブでできることの潜在的な可能性を十分にわかっているわけではない、すべて引きだし終えているわけではないという。toio博士のアレクシー氏は、「『工作生物 ゲズンロイド』を作ったユーフラテスさんに最初に持っていって、「こんな動きができた」「こんなつかいかたもありますよね」と言われたときには、なるほどと僕らが関心した」というエピソードを。
田中氏は、「一見2台のキューブだと少ないように見えますが、例えばその2台を自分と相手・敵と味方、仲間、オブジェクト(コンピューター上で操作や処理の対象となる何らかの実体)などに見立ててゲームのルールを設計すれば、想像以上の表現力があります。四角いロボットをプログラミングしてただ動かすだけではなくて、ゲームとして遊ぶということができるので、、これからたくさんクリエイターの方々とコラボしていろんな表現を引き出していきたいと思っています。」と、今後のtoioの可能性を語った。
参考:toio公式サイト
https://toio.io
※STEAM教育とは
Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)をひとまとめにした、世界で注目されている教育手法のこと。