JR東海が1993年から実施しているキャンペーン『そうだ 京都、行こう。』。その企画の1つで、2022年冬に展開されている『禅と湯 ととのう京都』プレスツアーが開催された。
本企画は、冬の京都を、禅と銭湯の世界を楽しんで渡り歩くというもの。2021年の『新語・流行語大賞』にノミネートされた、心身ともにリフレッシュすることを指す「ととのう」を体験するというコンセプトだ。
ツアー企画にあたっては、『ととのうセット』という旅行商品のパッケージ商品として販売。同社が新型コロナウイルス禍で展開している『#ずらし旅』のWEBサイトや、EX旅のコンテンツポータルで事前購入ができ、こちらは3月10日まで、現地では、JR東海ツアーズ京都支店やJR東海ツアーズ京都駅新幹線中央口支店にて3月13日まで2000円(ともに税込)で購入でき、以下の4点セットが手渡される。
①対象寺院の参拝整理券(※対象寺院:天龍寺、東福寺、南禅寺、萬福寺、興聖寺(宇治))
②京都府浴場組合加盟店の入浴券(それぞれいずれか1箇所)
③社寺・銭湯だけでなく、飲食店や観光スポットが掲載された『ととのうMAP』
④オリジナル銭湯タオル
今回のプレスツアーでは、『ととのうセット』ホームページ(https://souda-kyoto.jp/other/totonou/)でピックアップして紹介している船岡温泉、萬福寺、興聖寺のほか、さらさ西陣、大徳寺大光院、閑臥庵をめぐった。
1月中旬に開催された本ツアー。昼のJR京都駅に集合し、京都市北部の金閣寺方面にある船岡温泉へ大型バスで向かう。冬の閑散期ということもあってか、渋滞に遭うこともなく、30分もしないうちに、スムーズに到着した。
京都府内には100軒ほどの銭湯がいまだ現役で稼働しているといわれ、銭湯が文化として根付いている。そのなかで船岡温泉は、1923年に創業した料理旅館「船岡楼」に併設する浴場としてスタート。もうすぐ100周年を迎える銭湯で、国の登録有形文化財にも指定されており、国内だけではなく国外でも知られる場所となっている。体が「ととのう」ことはもちろん、建物内外に大正ロマンが漂い、歴史を生で体感できる。
施設内には日本初導入したといわれる電気風呂をはじめ、ジェットバス、薬風呂、サウナが楽しめる。そんな船岡温泉で、とくに目を引くのは脱衣所。格天井と呼ばれる天井部分には、源義経と鞍馬天狗の彫刻があしらわれた漆塗りのモニュメント、その下にある欄間には、1932年の第一次上海事変を描いたものと、見入ってしまう珍しい欄間も。
続けては、船岡温泉から徒歩3分の場所にあるカフェ『さらさ西陣』へ。もともとは銭湯『藤の森温泉』として運営していたが、これをリノベーションしてカフェとなった。中に入るとさっそく元銭湯ということが感じられる、独特の高い天井があり、開放感を感じる。場内の階段を上がったスペースは、もとは浴槽だろうか? 凹凸のレリーフを施した装飾タイル『マジョリカタイル』が壁面に散りばめられており、また違った顔を見せる。
『さらさ西陣』では、ご当地グルメというトルコライスも見せてもらった。豚カツと海老フライでボリューミーに感じるが、豚カツの下には、ご飯が敷き詰められ高さを演出しており、目でもおなかいっぱいになってもらおうという工夫が窺える。ちなみに、『さらさ西陣』店内は京都アニメーション制作のTVアニメ『けいおん!』内に出てくるカフェのモチーフと、“聖地”としても知られており、“放課後”の時間帯にティータイムとするとより雰囲気が楽しめるかもしれない。
『さらさ西陣』を出て、再び北へ約10分歩いて『大徳寺大光院』へ。こちらは豊臣秀吉の弟で、“小一郎”とも呼ばれた秀長の菩提寺として1592年に建立。しかし、明治時代の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で解体の憂き目に遭ってしまう。その際に大工が素材を残しており、今の場所に1955年に復元したという。
境内に1歩足を踏み入れると、幽玄さを感じる庭園に一気に気持ちが澄み渡っていき心が“ととのう”感じがする。絵師・狩野探幽の筆と伝わる襖絵や、「三石(みついし)の席」とも称される茶室を、3月18日まで事前予約優先制で特別公開している。
この日の夕食には京都御所の北側にあり、京都市営地下鉄烏丸線の鞍馬口駅から歩いて約3分ほどの閑臥庵(かんがあん)を訪れた。黄檗(おうばく)宗の禅寺という同所だが、暗闇の中、金色に輝く建物は、どこか現実離れした雰囲気が漂う。精進料理を提供しており、出汁も含めて生き物の殺生をした食材が並ばないことが特徴。そのなかには、翡翠のような緑色に色付けされたもっちりとしたお麩の料理、お刺身に見立てた赤いこんにゃく料理など、彩りも楽しめた。
翌早朝には京都市を離れ、宇治市の黄檗駅近くにある萬福寺へ。こちらは1661年に“いんげん豆”の名前の由来でも知られる中国僧『隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師』により開創された、黄檗宗大本山となる。臨済宗、曹洞宗とともに、「禅宗」に区分けされる黄檗宗だが、その特徴は中国的な特徴を色濃く残している。とくに同寺については、ガイドをしてくれた主事の吉野弘倫氏によると、63歳で来朝された隠元禅師に、この地に長くとどまってもらいたいという思惑もあり、中国的な特徴の再現に腐心したという逸話も残っているそうだ。
同寺では坐禅で“ととのう”体験。調身(ちょうしん)、調息(ちょうそく)、調心(ちょうしん)という、呼吸を整えることによって心を整えていくという心構えを教えてもらう。坐禅というと痺れるほど足を組むというイメージがあるかもしれない。しかし、同寺の体験では、足を組む姿勢が難しければ、足を伸ばしたりすることも許可をもらえたりと柔軟に対応してくれるため、敷居は低い。
そして最後に宇治へ移動し、興聖寺を訪れた。長い上り坂の先にある興聖寺は、曹洞宗の禅寺となり、先程の萬福寺とは違った雰囲気を感じることができる。同寺では、宇治抹茶お香づくり体験が3月12、13日に行われる。本体験は同寺で普段から行われているものではなく、今回の『禅と湯 ととのう京都』のための特別メニュー(詳細:https://ec.jrtours.co.jp/ec/search/pc-tour-list/ty-op-totonou/?top_type=6&dep_region=01)となっており、貴重な体験となっている。
また、興聖寺のある宇治といえば平等院鳳凰堂をはじめ京都の観光名所の1つ。さらに、京都アニメーション制作の『響けユーフォニアム』の舞台となり、“聖地”でも知られるが、1月中旬という時期は、散策している方もパラパラといった様子で、人の映り込まない写真を落ち着いてゆっくり撮影できる印象だった。
こうしたツアーを通してJR東海担当者からは「感染状況が落ち着いたタイミングで、ぜひ京都でととのってみてください」と、メッセージが寄せられた。
■「そうだ 京都、行こう。」禅と湯 ととのう京都
https://souda-kyoto.jp/other/totonou/
※大徳寺大光院の茶室に関しては、取材により特別に撮影しております。一般の方は写真・動画撮影禁止です。ご注意ください。
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